クラウド設計図鑑

AI基盤編 / はじめに

AI基盤エンジニアとは

AI基盤エンジニアは、モデルを動かす人ではなく、要件から性能・コスト・セキュリティを逆算してAI基盤を設計する人です。このJourneyで扱う範囲と進め方を説明します。

モデルを動かす人ではない

LLMをローカルで起動すること自体は、いまや数コマンドで終わります。企業でAI基盤を担うエンジニアの仕事は、その手前と後ろにあります。「何人が、どんな文書に、どの応答速度で、どこまでの権限で到達してよいか」を要件として定義し、そこからモデル・GPU・推論方式・検索構成・監視・コストを逆算する仕事です。

順序を逆にしない

AI基盤の設計でよく起きる失敗は、技術から入ることです。このJourneyでは、一貫して右側の順序で考えます。

  • vLLMを使いたい → Qwenを置く → RAGを作る

    利用規模 / 同時利用 / 機密性 / SLA → 必要性能 → LLM・GPU・Servingを選ぶ

  • 27Bモデルだから、このGPUを買う

    Model weights + KV Cache + Batch + Context Length + Runtime = 必要メモリ

  • 検索した機密文書をLLMへ渡し、回答から隠す

    利用者の権限を先に確定し、検索の時点でACLを適用する

  • 回答が古いのでFine-tuningする

    課題の種類を切り分け、更新性の問題ならRAGで解く

JourneyとTechnologyを分ける理由

Journey

「なぜこのタイミングでvLLMが必要なのか」を学ぶ場所。企業の状況と課題から、判断を追体験します。

Technology

「vLLMそのものを詳しく知りたい」ときに読む辞書・専門解説。判断の文脈から切り離して参照できます。

このJourneyで身につける流れ

  1. 要件定義
  2. 非機能要件
  3. Build / Buy判断
  4. LLM選定
  5. GPU選定
  6. Serving選定
  7. RAG設計
  8. Security設計
  9. Observability
  10. Benchmark
  11. Capacity Planning
  12. 本番Architecture

題材

架空企業「Nortia株式会社」(社員1,000人、AI利用想定500人、対象文書約10万件)の社内ナレッジAI基盤を題材にします。社員がPDF・設計書・規程・FAQについて質問すると、権限を確認し、関連文書を検索して根拠付きで回答するシステムです。